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2006年04月07日

●承元元年(1207)4月 「熊谷入道宛・証空自筆消息」(京都清涼寺蔵)

 清涼寺の迎接曼茶羅二幅、及びその由未記とともに伝来し、現在の装丁は源空・証空の消息二通を一巻に仕立てたものである。 本書は証空の消息部分であり、四月三日熊谷入道殿とあることから、熊谷蓮生房直實に宛てたものであることがわかる。
 文中に「しこしりして、わうさうする人々は、入道殿にかきらすおほく候、かやうにしほくを……」 とあり蓮生房の往生宣言に関係するものと考えられており、この四月三日は承元元年(一二〇七)前後のことと考えられている。また、 それに続き「うれしさをむかしはそてにつつみけり□□房の御返事也」」とやや趣を異にした筆致にて染筆されている。連綿を多用し、 変体仮名を用いて書写されており、証空の卒意の書が窺える。

「二字ともかへしまいらせ候ぬ。
御ふミ又候めり。
およそこのでうこそ、とかく申にをよび候はずめでたく候へ。
わうざうせさせ給たらんにハ、すぐれておぼえ候。
しごしりてわうざうする人々ハ、にうどう殿にかぎらずおほく候。
かやうにじぼくをおどろかす事ハ、まつだいにハよも候はじ。
むかしもだうさくぜんじばかりこそおハしまし候へ。
返々申ばかりなく候。
ただしなに事につけても、佛道にハまじと申事の、ゆゆしきだいじにて候なり。
よくよく御ようじむ候べきなり。
かやうにふしぎをしめすにつけても、たよりをうかがう事も候ぬべきなり。
めでたく候にしたがひて、いたはしくおぼえさせ給て、かやうに申候なり。
よくよく御つつしみ候て、ほとけにもいのりまいらせ給べく候。
いつか御のぼり候べき。
かまへてかまへてのぼらせおハしませかし。
京の人々、おほやうハみなしんじて、念佛をもいますこしいさみあひて候。
これにつけても、いよいよすすませ給べく候。
あしざまにおぼしめすべらず候。
なをくめでたく候。
あなかしこなかしこ。

   四月三日。証空
熊谷入道殿へ

 「うれしさを 
    むかしは 
      そでにつつミけり」

       □□ハうの御返事也」(清涼寺蔵『証空自筆消息』)